《MUMEI》

「へへへ」
嬉しくなって後ろに倒れた、背中がスプリングによって跳ねる。


「風呂上がりのいー匂いする……」
荷物を出し終えて七生は俺の手を鼻に付着させた。
あんまり触られるとなんかどきどきしてくるから止めて……

七生が俺の目線に合わせてくる。
顔の右真横に手を付いた。上体を起こし、左に腰を据えて俺の腰にくっつけている。
七生の顔で影が出来た。

七生だといとも簡単にこんな体制も許してしまう。


「風呂行きなよ……」
名残惜しくなる前に。




「いってきますの……キスしていい?」


よく通る声だな……ずっと聞いていたい。目線が合うと瞳に俺が映ってると解る。かなり俺は、七生のお願いに弱いみたい。今に始まったことじゃないけど。



「………………う            ン、 」

……後半殆ど聞いてないな。
頬に何かぶつかる感触を残し七生は勢い良く風呂へ行った。口だと歯止め効かないのは互いに解っているようだ。


「頑張りぃよ、木下」
皮肉混じりに南が笑う。


「…………んー。」
体を壁に預けた。
まだ何かある気がして、七生が触れた頬に手をやる。ま
帰って来たら人前でやり過ぎるなと喝入れておかなきゃ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫