《MUMEI》

人より武術に長けていたから。
ただそれだけの理由で独りになった。
皆怖がって近寄らなくなった。

そして、自分を隠した。

じきに友人ができた。

だけど本当の友人じゃない気がした。

その頃だった。
王宮への仕官の誘いが来たのは。

自分を隠さなくていい。

その解放感はとてつもなく心地良かった。

初めは同情だった。

いつからだったのだろう。

それが”恋心”に変わったのは

気付けば皇子のことばかり。
自分でもおかしいと分かっていても止まらなかった。

否、止めれなかった。
* * * * *
「そろそろ任務のお時間です。」

王宮の侍女が自室に迎えにくる。

「本日は街の視察に同行して頂きます。」

「あぁ、今行く。」

短い返事をすると、入口にあった気配は遠ざかっていく。

「さて、と。」

ソファから重い腰をあげる。

「(いつまで偽りを続けるつもりなのだろうか。)」

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