《MUMEI》

嘘だ。

沙弥は今も現実世界で泣きながら俺の帰りを母さんと待ってる。

でも、実感が持てない。

悔しいが矢吹慶一郎が言った事は、俺の中で嘘と認識したくても出来ない。其れほどこいつを信用してるって事だ。

脳内に矢吹慶一郎の事が広がる程に眉間の皺が深くなっていく。

「沙弥は元々ゲームはやらないんだ。」

「兄方達を助けるべくと必死だったから私がほんの少し手助けをしたんだ。だからこれは確かな情報だよ。」

「黙れ。」

声が怒りやら何やらで震えそうになる。

このゲームは目の奥がじんと鈍く熱くなっていく感覚もあるのか、と少し感心したりした。

「ならば何故?」

何も言えず只手に込める力が強くなっていったその時、矢吹は身長差もあり見下ろす様に俺を見た。


「`嘘だ´と声を張り上げないんだ?」


「!!」


図星だった。

こいつには見えているのか。俺の心のなにもかもが。

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