《MUMEI》

キアンちゃんがオレの側頭部に蹴りを入れていたのが視界の隅に映る。

……が、なんともない。

以前なら倒れていてもおかしくない攻撃だったはず。

原因として考えられるのは今起こっている肉体、もしくは精神異常による『ソウル』の強化とみて間違いないだろう。

ということは、だ。

訓練が再開されてからの彼女は、必要以上に手加減していたワケではなく、むしろその逆。

オレの急激な変化に戸惑い、手を強めていたとすれば、彼女がこれまで見せていた表情や行動にも合点がいく。

「キアンちゃん。この際、手加減なしで相手してくれないか?」

「いいんだね……? 本気で」

チラと横目でジュードさんの合図を待つキアンちゃん。その彼が頷《うなず》いた瞬間――


「ハァアアァァァ――――――ッ!」


彼女の全身から目映《まばゆ》いばかりに溢れ出す白や黄色の輝きは、夜空の星々を彷彿《ほうふつ》させる。

遂《つい》に本気のキアンちゃんを相手にする事態が発生してしまった。もう、どうにでもなれ!

「いくよっ! ケータちん!」

「こい!」

――二人同時に飛び出し、互いの左が交差する。

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