《MUMEI》

夜開いてる店で、服を買ったんだ

洒落た服は必要ない

ジーンズとスニーカーにシャツ、
そしてパーカーを買ったんだ

それから鞄をひとつ、

コンビニで中には入れるものを買った

水と塩、それに、タオルを一本

それだけで充分だから

着ていた洋服は、コンビニのゴミ箱に捨てたんだ

コンテナが並ぶ深夜の埠頭

気配を感じた、ナチュラロイドのね

身を隠す必要はない

日本に俺を倒せるナチュラロイドの存在はないからだ

お待ちください、翔太様

綾波さんか、

話は聞きました、出航まで、まだ、日がありますよ、

よくわかったな

ハワイに行かれるのですね

ひと目見とかねーとな

その後、どうなさるおつもりですか?

答える必要はない、

翔太様、あなた様を引き止める手立ては持っておりません
ですが、時間を頂けませんか?

めんどくせーよ
退け

密航なさらなくても、ハワイへ贈り物届けて差し上げます

結構だ

翔太様、眞由美様をお捨てになられのですか?!

捨てられたのは俺の方だ、
俺の想いは届かなかったようだよ

それは違います!
いつかはけんさを受けなければ、眞由美様の命にも関わる事でもあるんです!

まやかしだよ、命にはかかわらねーよ

子宮をなくすということは、女のいのちを無くすのと同義です!

なら、女の命取り引換に、俺を切り捨てたという事だ

翔太様!

まだ、何か用が、あるのか?

築き上げた物を無にすると言うのですか?!

俺にはなんの意義もない物だろ?

翔太!

眞由美の、声

お腹を押さえて、歩いて来てたんだ

聞いてよ

今更なにをだ?
その腹の中に何があるってんだ?

反対するのはわかってたわ、
でも、私の意思で選んだことよ

そんなにネオロイドの、子供が産みたいのか?

貴方の子供ならね

何が子宮を使わせてやるだよ、
もう、使われちまってんじゃねーか?

子供がいるわけじゃないわよ

同じだろ?
生理は止まり、母乳も出るぜ

受精してないわよ

カプセルが壊れなきゃな

コピーよ、妊娠なんかしないわ

コピーだと、よく、調べられたな?

私の遺伝子の母がしたことよ、
だれより貴方の子どもを産むことを望んでる人よ、
信用して、構わないでしょ?

なるほどね

どこ行くのよ?!

もう、俺に関わるな

な、なんでよ?!

言わなきゃわかんねーのかよ!!

……言ってよ

………みんな、大切にしてるのは、ネオロイドだろ?
俺じゃねーよな

そんなこと……

誰一人!、俺の気持ちを汲んだ奴はいねーじゃねーか!!

足元のアスファルトが、砕けて宙を舞ってた

眞由美、君だけは、違うと思ってたよ

翔太………あっ、うっ、痛い、あうっ!

真由美が膝を付いたんだ

眞由美様!

駆け寄った、綾波さんの手を払い除けてた眞由美

………翔太、手を、貸して…
お願い……

地面に倒れた眞由美が、俺に手を伸ばしてる

翔太……

ちっ、くそっ!



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