《MUMEI》 2「……今から、どこに行くの?」 13日も明けた14日 当てもなく表通りを唯歩くばかりの二人 これから一体どうするつもりなのかと 坂下の後ろを小走りについていく少女が息を切らしながら問うてきた 坂下は暫く考え込んだ後、解らないを返す 「……お前は、どこに行きたい?」 逆に聞き返してやれば、少女は徐に空を指差しながら 空が近いところ、とだけ言って返してくる 「……空が、近いところか。なら、あそこか」 思い当たる場所があるのか坂下は歩き始め 暫く歩いて到着したソコは、街の中央シンボルとなっている電波塔 丁度着いたエレベーターを使い、最上階へと向かう 「空、近くに見えるか?」 後ろを付いてくる少女へと振り返りながら聞いてみれば 少女は暫く空を見上げ、そして小さく頷く そして視線を下へと落とすと、抱き抱えていた瓶の栓を開け ソレを逆さにしていた 「お前、何して……」 「お母さん、空見るの、好きだったの!!」 坂下の言葉を遮る様に声を荒げながら、灰を全て撒いてしまう その灰は風に流され、そして消えていく 全て消えてしまった次の瞬間 眼下に見える景色に、一斉に彩りが現れた 「……何、コレ。お花?」 辺り一面に咲き始めた花花 それは母親が好きだと言っていたらしい桜の花びらによく似ていた 「……私、行かなきゃ」 「行くって、どこに?」 当てがあるのかと問うてみれば 少女はゆるゆると首を横へと振りながら 「……当てなんて、ない。でも、何もしないなんて嫌!このままじゃお母さんが可哀想!」 だから何かをしたいのだ、と 見上げてくる少女の顔は今にも泣きだしてしまいそうで 坂下は僅かに溜息を吐くと、徐に膝を折る 足元に咲いていた小さな花を一本手折ると少女の髪へと添えていた 「……これ」 「行くぞ」 少女の声に何を返す事もせず、坂下は歩き出す 結局何処へ行くかは決まらないまま 「……お花、一杯咲いてる」 辺りを見回しながら歩いてみれば それまで意識してはいなかったが、様々な花が咲き乱れている 「……これは全て、13達の灰から咲いた花なんですよ」 その彩りに見入っていると目の前に、不意に人影が現れた 次から次へとよくも湧いて出る、と舌を打ちながら 一方的に話し始める相手を軽く睨み付ける 「この世界はとても欲深い。。これ程までヒトを喰いながら、まだ人を欲している」 何かを憂うような相手の様を、坂下は一瞥だけし 興味がない、と踵を返した 「……13の運命から逃れたければ、この世界を壊すしかない。人には到底無理な事だけれど」 「……だから、諦めて死ねとでも言いてぇのか?」 冗談じゃない、と吐いて捨てれば その相手は聞こえるほどあからさまに溜息を吐く 「……まぁ、抗いたければ抗えばいい。結末はないも変わらないのだから」 嫌な笑い声を上げながら、その相手が去っていくのを気配で察する 言いたい放題言ってくれる いい加減苛立ちも頂点に達し、坂下は音もなく刀を握り返し 「色々、忠告ありがとな」 身を翻すその動きを借り刀を振ってやれば その刃は相手の首を切り落とす その瞬間、少女の眼は開いていた方の手で塞いでやった 「……やっぱり、アナタ嫌い。でも、アナタにこうさせるこの世界は、もっと嫌い!!」 目の前に転がる死体を目の当たりにし 少女は坂下の手を振り払い走り出す 何処へ行くつもりなのかは、あえて聞かなかった 連れて歩く義理など、元より坂下にはなかったからだ 「……いいの?一人にして」 不意に声が聞こえ、目の前に知った顔が現れる 何やら含みのありそうなソレに、何かあるのかを問うてみれば 「……あの子は、知ってるわよ。この世界を支配する、その人の居場所を」 聞かされたソレに僅かに驚く 「このままじゃあの子まで、世界に食われてしまう」 「だから?」 「……お願い。あの子を、死なせないで」 珍しく乞うような言の葉 坂下は何を返してやる事もせず、相手へと睨む様な視線を向け そして身を翻し、少女を追った 幼い脚ではやはり遠くまではいけなかった様で 電波塔を降りてすぐ、その姿は見つかった 「……どうして、追ってくるの?」 「別に」 「なら、付いてこないで」 「何処行くつもりだ?」 「……関係、ない」 前へ |次へ |
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