《MUMEI》

「何が言いたい。」

歯の奥を強く噛み締める。

反論にすら力がこもらない。

「単純な事だ。君は――…カケル君は私を信用している。」

「そんな事ねぇよ。」

「若さが足りないぞ。ゲームを始めた頃はもっと生き生きしていた。」

「?」


始めた頃…?


「お前、俺の事―――…。」

疑問が口から出そうになった時。

「会長。お時間で御座います。」

矢吹慶一郎の背後から突如として現れた細身の女性が話を止めた。

足音、気配すら存在しない様な、重みを感じない足取りで。

「もうそんな時間か。柊、下がって良いぞ。」

「…失礼致しました。」

柊と呼ばれた女は表情一つ変えず踵を翻した。

「おい!待てよ。逃げる気か!」

「逃げる?面白い事を言いますね。今のままの君なら…そうだな、小指で倒せますよ。」

柊同様踵を返そうとした矢吹に手を伸ばすと、アルテミスが俺の腕を掴み、行く手を阻んだ。

「今日のところはここまでだ。」

「待てよ…俺はアイツに用があるんだ!そこを退け。」

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