《MUMEI》
休憩
 ユウゴは次の交差点を右に曲がると、すぐに目についた路地へ入った。

そのまま止まることなく走り続ける。

 すでに背後からの銃撃は止んでいるが、きっと奴らは見失った地点から手当たり次第に探してくるだろう。
もし、この路地が行き止まりならば終わりである。

 ユウゴはこの道がどこかに通じていることを祈りながら走った。
その祈りが通じたのか、やがて細い路地は住宅街へと抜けた。
「よし、どっかの家に隠れるぞ」
ユウゴの声に素早くユキナが反応した。

 彼女は素早く適当な家を選び、すでに鍵を壊されている玄関のドアから中へ入った。
ユウゴもサトシを背負ったまま、その後に続く。

しかし、中にユキナの姿はない。

「おい、どこ行った?」
 ユウゴがどこにともなく声をかけると、二階から返事があった。
玄関のすぐ前にある階段を上がる。
 人を背負ったまま階段を上がるのは、かなりきついものがある。

「こっち、こっち」
 なんとか階段を上がりきったユウゴをユキナが廊下で待っていた。
ユキナはそのまま、突き当たりの部屋へ入れと誘導する。
言われるまま、ユウゴはその部屋へ入った。

そこは誰かの寝室だった。
「ほら、ここに寝かせて」
ユキナがベッドをポンポン叩く。
「よし、降ろすぞ」
「う、うん」
ユウゴはそっとサトシをその上に降ろした。
小さくサトシの呻く声がした。
「サトシ、横向きになれるか?」
 ユウゴは、座ったままのサトシを支えるように手を伸ばす。
背中を撃たれているのだから、仰向けは無理だろう。
まだよくわからないが、腹部まで弾が来ているかもしれない。
俯せも危ない。
横向きに寝かせるのが一番のように思えた。

「ゆっくりでいいぞ」
ユウゴが言うと、サトシは小さく頷いた。
痛みで話すこともできないのだろう。
 サトシはユウゴとユキナに手伝われながらゆっくりと横になった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫