《MUMEI》

「乙矢は秘書目指すの?」


「母さんか。」


「うん。乙矢ならなれるよ。ぴったり。」
放課後は担任と三者面談だ。おおよその進路がこれで決まる。



「そう」



「照れちゃってー」


「まさか」
無駄のない対話、表情も全く変化がないけど、照れたように見えた。


「俺は明日なんだよ。大学どうしよ。
推薦取れそうなところ探して、文学部辺りに入るかな……。私立?奨学金になるよね。」


「それ、やりたいの?」
乙矢の言葉がグサッときた。そう、それが問題だ。

自分は何がやりたいなんて、知らないんだ。


大学行ってから見つけるとか……甘いか?




「二郎いた!」
七生が乙矢の部屋に入って来た。探してたのか。


「出てけ」
入った瞬間に七生を追い払う。


「うるせー!浮気か?浮気なのか!」
今はそんな下らないことで七生と争いたくない。


「違うよ。」


「本当?」


「本当。」
……七生は心配性だ。最初はそれだけ好いてくれてるのかと嬉しく思ってたけど、正直うざったい。


「よそでやれ」
…………乙矢ごめん、勉強中なのに。

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