《MUMEI》

バイトと嘘をついたから、
取りあえず行ったんだけどさ

鍵を渡したんだ、永山さんに

少しブラプラして帰宅すると、永山さんが俺の部屋で待ってたんだ

早かったね

う、うん、この顔じゃダメだって

まだ、腫れてるもんね

買ってきた飲み物を渡して
向かい合って座ったんだ

緊張する

ねぇ、私のどこがいいの?

へ?、……どこって、何度かデートして楽しかったし、

けっこう、めんどくさい女だよ

だからなに?

………伊藤が、思ってるような女じゃないよ

それは、なんとなく、わかるよ

………幻滅したよね?

なんで?

だって………

………よく、わかんねーけどさ、
今も楽しくてさ、
知らない永山さんがたくさんいそうだけど、でも、そんなもんだよね?
なんかいもフラレたけど、
今、こうして目の前に居るってだけで、凄く嬉しいしさ

…………私のこと知ったら、きっと嫌いになるよ

どうして?

……どうしても

そっか、じゃぁ試してみようよ、
一緒に居ればドンドンお互いのことわかってくるよね?

…………前向きなんだね

それしか、ねーもん、
また、フラレるかもしんねーけど、
でも、むかしより前進したもんな

…………身体?

え?

やりたいから?

そ、いや、あのさぁ、そりゃぁ、でも

身体なしでいい?!

う、うん

……………じゃぁ、彼女になってあげる

マジ?!

永山さん、やっと笑ってくれた

昔話をしてたんだ

高校の同級生のだれと誰がつきあってたとか、
俺、知らないことばかりでさ

永山さんがトイレに行ったんだよね

ボロいアパートだから、オシッコの音が

な、なんか、

こんなことでもエロく感じちゃうのって、変だよな

朝まで、たくさん話してたんだ

でも、隣にも行けなかったんだ

でも、朝、駅まで送るとき

ねぇ、ノブ、アキナって呼んでよ

って

なまえを呼び捨て、やったぁ、
また一歩前進した!

彼女かぁ、へへ、

舞い上がったね、マジ

…………

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