《MUMEI》
雨の日の必然
………寒い。
冷たい雨が私をひたすら打ち続ける。

「ここ、どこだろう…」
家を飛び出し、がむしゃらに走ってからどれ程たったのだろうか。
目の前には水溜まりだらけの無人の公園。
もう立っている気力すら失った私は、公園のベンチに倒れこんだ。
ベンチにも水が溜まっており、すでに汚れきった服に泥水が染み込んできた。

「これからどうしよう……」
私は寝そべったまま蚊の鳴くような声でぽそりと呟いた。
父親の糸目のない暴力によって、体力的にも精神的にも私は疲れきっていた。
終わりが、見えない。
もう、疲れた。
このまま眠れば楽園へ逝けるような気がした。

「もういいや…なんでも…」

段々目蓋が重くなってきた。
本当にこのまま死んでしまえればいいのに。
打ち続ける雨は激しさを増していく。
その激しい雨すら段々心地よく感じてきた。

「………ぃ……おい」
ふと、低い声に呼ばれた気がした。
父親だろうか。
…まただ。
また絶望の淵に立たされる。

…そんなことを考える暇もなく、私は深い眠りにおちていった。

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