《MUMEI》
わたし
『グズグズしてんじゃねェよこの馬鹿が!!さっさと酒買ってこんかいクズ!!』

『母さん今夜も仕事やけぇ…妹のこと頼んだよ。…くれぐれもお父さん怒らせんようにね、気を付けんさいよ』

『うわぁーーん!ねーちゃあん!ママどこ行ったん!わーん!!ママぁー!』

『内間さん家のお子さん…可哀想にね。学校にもろくに通えとらんのんじゃろ?気の毒に…両親があんなけえねぇ…』

『なんか臭くね?』
『内間じゃろ。あいつん家ぶち貧乏じゃけえ、風呂はいっちょらんのじゃないん、きったねぇー』

クスクスクスクスクスクス…

…やめて。
私に当たらないで。
私に任せないで。
私の話をしないで。
私を笑わないで。

………私のことはほっといてよ!!

「………………え?」

目を開けると、見慣れない天井があった。

「………ここ…どこ?」

私は身体を起こし、辺りを見回した。
…どう考えても自分の知っている場所ではない。

この空間にあるものは、自分の座っているベッド、ステンレス製のデスク、薬品の並んだ棚のみ。

窓はひとつしかなく、壁も床も天井も真っ白のとても殺風景な部屋だが、薬品のいやな臭いで充満している。

………病院?

きっとそうだ。間違いない。
ふと窓の外を見やると、空は暗く厚い雲が広がっていて、大量の雨粒が地面を叩く音が耳に響く。

「いやな天気…」
無意識にそう呟くと、扉の向こうの足音に気付いた。


それが、全ての始まりだった。

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