《MUMEI》
仏頂面の男
ガチャ…

「あぁ、起きてたのか」

突然扉が開いて、見知らぬ男が入ってきた。

白衣を着ていて煙草をくわえている、物凄く仏頂面な男だ。

年齢は見た感じ三十代前半に見える。
多分この病院の医師だろう。

そしてその男はこちらに近付いてきて、何の了解もなく私の寝ているベッドの端に座った。

「どうだ、気分は」

突然問い掛けられ、少し戸惑いながら問題ないことを伝えた。

「ならいい」
そう呟くと、男は煙草の煙を吐いた。

…しばらく沈黙が続き、気まずいと思い何か喋ろうと試みるが、現状が理解できなくて頭が真っ白になる。

ふとその男の顔を見やると、困惑していて気付かなかったが、とても整った顔立ちをしている。
背も高く、大きな背中には包容力を感じられる。
表情さえ柔らかくすれば本当に言うことのない、俗に言う「いい男」のはずだ。

「…………なんだ」
じっと見つめていたら鋭い目でジロリと睨まれた。
しまった、見すぎた。

「あっ…ごめんなさい…」
慌てて謝り、すぐに自分の行いを後悔した。

この男の顔は本当に恐い。
それは誰もがそう思うはずだ。

………………。

また沈黙。もう嫌だ…。
心の中で助けを求めると、再び扉が開いた。

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