《MUMEI》
Fly Me To The...
「リョータ君〜?」

私は来た道を戻りながら彼を探した
この辺は崖もあり、余り深く入ると方向も分からなくなる

「もう…どこ行ったのかな…」

日は少しずつ傾きつつある、このままだと森は暗くなり危険だ

「ったく…世話の焼けるヤツだな」
「アスカ君?」

後ろで声がしたと思うと、めんどくさそうに頭を掻きながらアスカ君が立っていた

「迷ったなんてことになったら、楽しい夏休みもオジャンだぜ」

その時、ふとリョータ君の声が聞こえた気がした
「……あっちだな」
アスカ君は軽々しく倒れた木々を飛び、声の方に向かって行く
「あ、待ってよ」
ボクも彼を追って進んだ




…花畑
リョータ君の声の場所には、目を疑うような眩しい花畑が広がっていた
それは、綺麗を通り越して、不気味と言う位に…
「すげぇな…」
アスカ君も思わず声を漏らす
リョータ君は花畑の中央にいた
「まるで…花の海」
ボクはそう言った
ざぁっと涼風が頬を撫でた、リョータ君はしばらく花を見つめていた後、怪訝そうな顔をした

「おい…おかしいだろ」
「あ?」
「ここに咲いてる花だよ!」
「花ぁ?お前、花のことなんてわかんのかよ?」
「ウチは花屋なんだよ!……なんなんだよ、ここは!」
訳の分からないまま、リョータ君は驚きの声を挙げる
「リョータ君…?一体?」
「…咲いてるんだよ…」
彼はぶつぶつと口を篭らせる
「なんだ?ハッキリ言えよ!」
「四季の花が……全部咲いてるんだ、ここに」
「え……?」



その瞬間、風が吹いた
凄まじい花吹雪が舞い上がる
「普通じゃない!」
リョータ君の声が聞こえた気がした


目の前が、光に包まれた

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