《MUMEI》
本音
気まずい空気が漂う中、誰かが乱暴に扉を開けた。

「ちょっとぉ、今日クソみたいに患者いるんだからさっさと来なさいよ」

今度は白衣を着た女性が入ってきた。
髪色は濃いめの茶髪で、女性にしてはかなり長身だ。
美人だが、あまりにもやる気のなさそうな顔をしている為、好印象は持てない。
この病院の医師は残念な人ばかりだなと、関係ないことを考えていると、その女性が私の存在に気付いた。

「何、その子患者?」
「まぁ一応そうだろう」
「何よ一応って、意味わかんない。てか受付来てなかったわよその子、保護者とかいないわけ?」
「あーゴチャゴチャうっせーな前の公園で倒れてたんだよ」
「はああ!?何大丈夫なのアンタ!」

いきなりその女性に肩を掴まれ私の体を大きく揺さぶられた。

「うわっ、だっ…大丈夫です…」
「嘘おっしゃい大丈夫だったら倒れないでしょーが!」
「あーもーやめろバカ女。コイツは俺が診るからテメェは戻れ」

その女性は納得いかない顔をしながらもしぶしぶ踵を返した。

「ほんっとうるせぇ女」

そう愚痴をこぼすと再び私の方を向いた。

「お前、名前は」
「う…内間文香です…」
「内間、保護者に電話するから番号教えろ」

保護者……
その単語を聞いた途端、私の過ごした悪夢のような日々が、走馬灯のように駆け巡った。

「…………です」
「あ?」

「…………………帰りたくないです」

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫