《MUMEI》

「二郎、七生君よ」
母さんと何やら話して七生が部屋に入って来た。

今日は小脇に何か抱えている。



「宿題やった?」
勉強をしに来たみたいだ。珍しい、どーゆー風の吹き回しだ?


折り畳みテーブルを出して向かい合って座る。

「辞書貸して」
驚いた、会うための口実だと思っていたのに、しっかり勉強してる。
英訳の宿題を教科書を睨みながらやっている。七生が静かなのは不気味。でも授業中寝なくなった。確実に学力が伸びてる。

いつだか、振り向いて貰うためなんて言ってたけど、そんなことしなくても俺はそのままの七生が好きだ。


「ここ、なんて訳した?」


「 どこ?」
やば、三行しか進んでないや。



「二郎は何処の大学行くの?」
うげ、唐突な質問。



「決まってない。私立ってことくらいかな。」


「ふーん。」


「あと一年だね。」
離ればなれになるまで。


「三年か……」
何か考えてるみたいだ。



「勉強しよーよ、」
意識的に注意をそらしてしまう。

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