《MUMEI》

「OSはやっぱり人口密度高そうね。」

「…う……人酔いしそう。」

「…右に同じ。」

OSはいつも通り、いやいつも以上に人でごった返していて早速入るのが嫌になる。

多分だが、俺はイメージ通り人混みが苦手で、現実世界の祭り事は好きだが楽しみきれないタイプだ。


まあ、ゲーム内で人酔いするのはこれが初だが。


「つべこべ言わない。」

アカネがまるで母の様な雰囲気を纏い、嫌がる俺達二人の背中をトンと押す。

「「ああ!」」

そして、OS内に一歩足を踏み入れた瞬間。

青字で浮かび上がるスキャン・コンプリートという文字。

「これでもう後戻りは出来ないんだから…。」

な、なんて少女だ!

どのステーションも、一度入るのに三百ジェルの使用が発生し出るのにも三百ジェルの使用が発生する仕組みになっているため、同じ駅を出たり入ったりするのはかなり勿体無い事である。

そして、それでアカネは俺達を出れなくしたらしい。

「アカネ…酷いわ!」

「何とでも!あんた達は押さなきゃいつまで経っても入れなそうだったからね。最悪走って行こうとか言いそうだし。」

全く持って大正解だ。

「はぁ。もう諦めるわ。早く行くわよ、首都クラリネスへ。」

はぁ、と溜め息を吐いたハルは本当に諦めた様で、素直に足を進めた。

かく言う俺としてはまだ諦めたくないのだが、スキャンをし終えたアカネの視線に耐えられるハズもなく、泣く泣く足を進めた。

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