《MUMEI》

深夜に抜け出してしまった。


早く会いたい。
ヅラを被って、目深に帽子を被った。
タクシーには勿論メガネ君のアパート前を指示。

家の前の扉にメガネ君の影が……。

「あけて!」

「先輩、静かに……」
ついつい、声が大きくなってしまう。慌ててノックする手を止めた。

「会いに来ちゃった」

「……開けれません」
うそ、メガネ君喜んでいないのか!迷惑そうな声色?

「どうして?」

「いま、開けたら先輩は仕事放ってしまうから……、大切にしてくれるのは嬉しいんです。けど、今まで仕事に一生懸命でキラキラしている先輩の努力を無駄にしたくないんです」

メガネ君……俺のことをそんなに思ってくれている……!

「わかってる。メガネ君と仕事、比べられないけど俺には両方大切。ただ、いろいろマスコミに書かれて精神的に滅入ってて一目会いたくて……、すぐ帰るよ」

「先輩……」
俺とメガネ君を隔てるドアが開錠された。
メガネ君のレンズの奥に、つぶらな瞳がウルウルと涙の膜を張っている。
寝起きの瞼が少しだけ浮腫んでいた。
今日は首元が怠そうな寝間着を着ていた、鎖骨に影がくっきり浮かんでいる。

「一目……」
寝汗をかいていたのかメガネ君の柳眉の並ぶ額に前髪が張り付いていた。

恐る恐る俺に歩み寄る、メガネ君……つかまえた。

「ついでに一口、食べさせて?」

「〜〜〜〜っ、ウソツキ!!…………んんっ」
メガネ君に叱られても、騙しても、この本物の柔らかいおっぱいを触りたかったんだよ。
童話もそうだったじゃないか。家の鍵を開けたら狼に食べられるシナリオだ。

舌で同じところを吸う、ぷっくりと膨らんで可愛くてまたいっぱい吸う。
歯を立てると甘い吐息が一層、増した。

「しぇ……、ぱ……」
舌ったらずな発音、Tシャツの中で汗ばんだ肌はよく滑る。

「しぇんぱいなんか……!しぇんぱいなんか、きらいい」

「いま、なんて?」
うそだ、嫌いだって?俺を?
メガネ君の眼鏡はずり落ちて、唇から溢れた唾液に、乳首は美味しそうに絖って膨らんでいるのに、俺を嫌いだって?

「きらいっ……!先輩なんて、おっぱいしか好きじゃないんだっ、おっぱい星人な、……んっ!」

うそつけ!
こんなにチューで感じるくせに。
ベロを絡めるといやらしく応えるくせに。

「俺を……、怒らせたな」
メガネ君を脇に抱えて待たせていたタクシーに突っ込む。
ザマーミロ、このまま誘拐してやる。
タクシー内では、小さく丸まって収納していた。

ぎゅう、と手を握って離れないようにする。
暗がりで表情は不鮮明だ。

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