《MUMEI》

だから地球上で国家間によるどんな争いが起きようと、残虐な殺戮が起きようと 、『ウォッチャー』はそれを淡々と観察するだけで、それに介入して関わる事は無かった。
(人間間の問題は、人間同士で解決させる。)
その思考においては、『ウォッチャー』
は限りなく機械に近い、冷酷な感情を持つ存在と言えた。
そうしたまるで、実験動物でも眺めるかのような人間の観察だけでは無く、
『ウォッチャー』の眼は、地球の外側の宇宙にも向けられていた。
『ウォッチャー』にとっては、そちらのほうが重要な任務であった。
深い漆黒の闇の果てからは、『ウォッチャー』でさえ予測する事の出来ぬものが、やって来る事があるのだ。
それを彼と盟約を結ぶ人間に伝える。
だが、解決するのは人間自身の問題だ。
そんなわけで今日も『ウォチッャー』
は、三百年前に朽ち果てた前任者から引き継いだ任務を、
飽く事も無くこなしながらも、いつに無い、人間で言えば胸騒ぎのような情動を感じていた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫