《MUMEI》 だから地球上で国家間によるどんな争いが起きようと、残虐な殺戮が起きようと 、『ウォッチャー』はそれを淡々と観察するだけで、それに介入して関わる事は無かった。 (人間間の問題は、人間同士で解決させる。) その思考においては、『ウォッチャー』 は限りなく機械に近い、冷酷な感情を持つ存在と言えた。 そうしたまるで、実験動物でも眺めるかのような人間の観察だけでは無く、 『ウォッチャー』の眼は、地球の外側の宇宙にも向けられていた。 『ウォッチャー』にとっては、そちらのほうが重要な任務であった。 深い漆黒の闇の果てからは、『ウォッチャー』でさえ予測する事の出来ぬものが、やって来る事があるのだ。 それを彼と盟約を結ぶ人間に伝える。 だが、解決するのは人間自身の問題だ。 そんなわけで今日も『ウォチッャー』 は、三百年前に朽ち果てた前任者から引き継いだ任務を、 飽く事も無くこなしながらも、いつに無い、人間で言えば胸騒ぎのような情動を感じていた。 前へ |次へ |
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