《MUMEI》

(面白い。何なのだ?この非論理的な
感覚は・・・・)
『ウォッチャー』は自分の内部に生じた得体の知れない情動を観察して、そのようにとらえた。
そして人間の三倍は長い六本の指を、目の前の液晶画面のようなものに素早く走らせると、天球スクリーンに、この恒星系の第十一番惑星付近の映像を、映し出した。
(む!これは!)
数十年ぶりに感じた驚きと言っても良い感情。
それを認識すると同時に、再び六本の長い指が画面を走ると、今まで眠っていたようだった周囲の機械が起動を始め、
薄暗かった部屋・・・・と言うより、
広間のような空間が、様々な機械の明かりで、見る見る明るくなっていく。
その急な明かるさの変化についていけず、数十年の薄暗い環境に慣れた、漆黒のアーモンド型の眼をとまどったように瞬きさせる。
(どうも、暗順応し過ぎていたようだ。眼球などいくらでも培養が効くが、長年使ったこの眼にも愛着があるからな。定期的に明順応のメンテナンスが必要だな。さて、と・・・・)
『ウォッチャー』は地球への通信回路を開いた。
(ひさしぶりに人間と話すのも楽しみだな)

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