《MUMEI》 少年は生まれた昔のこと、私たちは生きることに意味を持たせなかった。 昔のこと、私たちは命に意味を持たせた。 昔のこと、私たちは意味のないものに意味を持たせた。 この三点を踏まえて物語は進んでいき、物語は終わる。この物語はある人物の生涯を短的に書いていくもの、この人物の誕生から始まる。 この人物の両親は、模範的な両親だった。喧嘩を一つも起こさず、夫は妻を愛し妻に何不自由なく生活をさせて、決して他人に不愉快な思いをさせない聖人だった。妻も同じく聖人だった。妻は、近所付き合いもよく決して夫のことを愛せていた。 この夫婦に子供が生まれたのは、この二人の結婚生活が、ちょうど二桁になった頃だった。妻は子供を産む気がなかった、しかし夫は子供が欲しかった。なので妻は自分の気持ちを殺して、子供を産んだ。少年を産む前、妻はこう言った。 「私はこの子を産んでいいのかしら」と付き添いの看護師に尋ねた。看護師は答えた。 「あなたの子供は、今出たがっているのだから母親がそんなこと言ったらお子さんが出にくいですよ」と妻に囁いた。 少年は、生まれた。夫は妻に駆け寄り「ありがとうありがとう」と妻と子供に言葉をかけた。次の瞬間妻は笑っていた。しかしその微笑みは喜びの微笑みなのだが、寂しげなものだった。 それから3年の月日が流れた。少年は可愛らしく成長していた。 「ほら、こんなところで何をしているの早く帰るわよ。」妻は少年の目線に合わせるためにしゃがみ言う。 次へ |
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