《MUMEI》
僕は君を知ってるけど…。
*緩いアダルト表現あり。



いいかい?今宵一晩、チャンスをあげよう。そう告げた、その御方は僕に魔法をかけた。


*****


「隣、宜しいですか?」

そう声をかけて来た人物に、思わず見とれてしまったのは、整った顔立ちや容姿のせいばかりでなく…何処か懐かしいような親しみを感じてしまったからだ。


「あの…?」


『あ、すみません。はい、どうぞ。』

呆けたままの俺に、不思議そうな瞳を向ける彼に、慌てて隣の席を引き着席を促す。

『マスター、この方に俺と同じ物を…』


「いつも、お一人で?」

『あぁ、まぁ大体は』

「お相手に不自由なさそうに見えますが?」

『いや、それは買い被りでしょう?貴方こそ、引く手あまたでしょうに、何故?』


いわゆる同性愛者の集うバーのカウンター席でグラスを傾けながらの挨拶代わりのライトトーク。皆様方の下心を隠す事無く、繰り広げられる重い会話を背中で聞きながら…。


「何故?…何がですか?」

『俺みたいなのに、声を掛けたのかな?と思ってね。』


「ふふっ、好みのタイプだったから…と答えたらいけませんか?」


…潤んだ瞳で、そう告げられ不覚にも胸の高鳴りが押さえられなくなる。


『…っ、ははっ。誘いなれてるんですね。』


「初めてですよ。」


『え?』


「声をかけたのも、誘うのも、貴方が初めてなんです。」


こちらを見ずに、手元のグラスに浮かぶ氷を指でクルクルと回す。カラカラと氷がグラスに当たる音が心地好く響く。


その男性にしては美し過ぎる彼の横顔と仕種。一枚の絵画を見ている気分に陥る。


…参ったな。暫くは遠ざけるつもりだったんだけどな。前回、苦い想いで終った恋がブレーキになり次の恋に臆病になっていた。

そんな俺の心に、淡い気持ちを抱かせた彼と自然の流れの如く、店を出た。


*****


「んっ…はっ、はぁぁ…っん、……ン…」


ほの暗いベットサイドの光に照らされる彼の身体。ほんのりと紅く色づき、えもいわれぬ色気を醸し出す。


触れた場所が、溶ける程の熱を孕み、あまりの快感に気を抜けば此方が持って行かれそうになる。こういうのを、身体の相性が良い。と言うのだろうか?気付けば夢中で、欲望に固く猛る俺自身を彼の秘孔に何度も何度も突き入れ、掻き回し、敏感な痼を擦りあげ際奥に欲望を弾かせていた。



*****


情事後に眠る彼の頬に戯れでキスをする。あの方との約束、今宵限り…。月灯りに照らし出されるこの姿は、所詮仮初め。


僕は君を知っているけど、君は僕を知らない。


…ぽたり、ぽたり…。

涙の滴が、僕の眼から流れ落ち彼の頬に伝う。


『何を泣いてる?』


いつの間に起きていたのか、まだ眠気を帯びる彼の二つの眼がこちらを見上げていた。


「…っ、すみません。起こしてしまって…」


彼が、ゆるりと上半身を起こし、細長い美しい指先で、僕の頬に触れる。久方ぶりの感触に、再びぶわりと涙が溢れる。


…この指先で…


『質問の答えになっていないな。この涙の訳は?』


…もう一度…


涙の滴を指先で掬われる。彼の男性にしては美し過ぎる指先を僕の両手に包み込む。


…僕に触れて…


君の力強いタッチで、僕の声を世界中に響かせて?その為に、僕は神様にお願いしたんだ。


ニンゲンにしてって。



*****


すみません、途中で力尽きました。

もし、続き希望あれば、書かせていただきます。


読んでいただきありがとうございましたm(__)m

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