《MUMEI》
不意打ち、で何か。
*アダルト表現あり*


毎日の茹だるような暑さの中、残業続きで重い身体を引き摺って誰も待つ者の居ないアパートへと辿り着く。


…逢いたいなぁ。もう何日間逢ってないだろう、俺の恋人の姿を思い浮かべ苦笑する。


俺の恋人、陶山さんはバツイチで俺よりも一回り以上年上の男性。俺の学生時代に、陶山さんが空腹で行き倒れた所を連れ帰り、飯を食わせたのがきっかけで、自然と付き合う流れになった。


『青年。』
俺をそう呼び、屈託無く笑うその顔に胸がときめき、不器用過ぎる生き方に守ってあげたい気持ちが沸々と沸き上がった。


ノンケだった彼に、無理強いしたくなくて身体を繋げるのに、数年を要した。その間に、俺は大学生から社会人になり、お互いの多忙さ故にすれ違いが多く、最近は逢う時間がめっきり減ってしまった。


*****


ガチャリ、鍵を開け玄関と呼ぶには些か狭すぎる場へ足を踏み入れた。


『あれ?』

履き古した、でも手入れの行き届いた黒い革靴がきちんと並んで置かれていた。


…陶山さんが来てる?


彼の靴を見ただけで、ドキドキが止まらないとか俺どんだけ末期なんだか。


『陶山さん?』

リビングへと続く廊下を歩き、声をかける。が、陶山さんの姿はリビングにはない。


バス、トイレを経て、まさかの寝室を覗く。


…居た。と言うか…俺のベットの蒲団が、こんもりと膨らんでいる。寝室の電気は消されベットサイドの灯りがあるのみ。


『す、陶山さん?』

時刻は真夜中過ぎ、所謂午前様と呼ばれる時間帯。流石に寝てるか、と静かに出ていこうとしたら、蚊の鳴く様な声がした。


「……マッテ、青年。」


蒲団に包まったままの陶山さんに、不自然を感じ何かあったのかと慌てて近付く。と、イキナリ蒲団から出て来た陶山さんの腕に絡め取られ、蒲団に引き込まれた。


ぎゅうぅぅぅ……!!

痛い位に陶山さんに抱き締められて、俺は嬉しいパニック状態!って、陶山さん、もしかして全裸?いや、まさか…。


『陶山さん?あの…』

「……て、クダサイ…」

『!!』


消え入りそうな声だったけど、確かに聞こえた。な、何。なんなの、この不意打ちは?心臓バクバクさせながら、陶山さんの顔を覗き込む。


『陶山さん?』

「ぼ、僕だって…」

『はい?』

「し、して欲しい時が…あるんだ。」


薄暗闇でも、はっきりと判る程に紅潮させた頬。俺を抱き締める手は震えて…。陶山さんは必死に言葉を紡ぐ。


「せ、青年。僕をこんなにした責任、君にもあるよね。」

『はい。』

「じゃ…責任取って?」


あーもうなんて可愛いんだろね、この人は。


『待って、陶山さん。俺シャワー浴びて…』

「い、いいから、そのままで」

『え、じゃ、ローションを…そのままじゃ陶山さんが辛いでしょ?』


起きようとする俺の手を掴んだ陶山さんは、そのまま自らの秘部へと導いた。俺の指先に触れるそこは柔らかく潤っていて、受け入れる準備は整っていた。


『……っ、陶山さん、これ』


…まさか、陶山さん自ら解した?有り得ない出来事に、ゴクリと喉が鳴った。


…なんて人だ。身体中の血液が沸騰し、ドクドクと煩いくらいに脈打つ。激しい衝動が俺を動かし、陶山さんに噛み付くキスを浴びせた。


『…っ、ごめん。陶山さん、今夜は、優しくなんてしてやれない。』

「う、んんっ」


涙目で小さく頷く、目の前の愛しい彼を力強く抱き締め、後はもう無我夢中…甘く激しい時を過ごした。

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