《MUMEI》 セイント カントリー汽車はあっという間にクラリネスに着き、乗り込み同様慌てて降りる。 「「「ほっ!」」」 身軽な物腰でクラリネスの地を踏むと、やけに久々に来た気がする。 取り敢えず人の波に呑まれない様にクラリネスステーション(以下CS)を出る。 言葉を合わさず目でのやりとりは、なんだか楽しかったりする。 「ふぅ。」 抜けると、三人が横一列に並んだ。軽く身なりを整え、俺から順に歩き出す。 「これからどうする?」 ハルが目だけを此方に向け尋ねてきた。俺は急いだ足を緩ませる事なく返答した。 「取り敢えず、アカネの家に行く。案内頼む。」 「ついてきて。」 少し嬉しそうにしたアカネが、軽く手で合図をしながら先を行く。 「`住宅地´の中にあるの?」 「うん。ハルは違うの?」 「……カケルが、「どうせなら`辺境´にしようぜ。」って言うから。」 「………………。」 そのやり取りに、俺は決まりが悪そうに口を尖らせて見せた。 `住宅地´は、今の所ミリオンマップに表記されている街に指定された地域の全てが所持しているスペース。 家やアジトを作る用に出来ているので、そう呼ばれている。そして、そこに大多数のプレイヤーが家を構えている。 しかしそんなのはつまらないので、クエストの報酬や、冒険で時々見つかる街から離れた`辺境´エリアの家を買えば、と勧めたのだ。 「ハルだって俺の話術でまんまと楽しそうだったじゃねぇか。」 「そっ……………そうね。」 返す言葉が無くなったハルはいつも非常に苛ついた顔をするが、いつもよりやけに素直だ。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |