《MUMEI》 「で?結局何処に行くか決まった?」 目的もなく歩き続ける道中 そろそろ目的地の目星位は付いたのではと透子が問うてくる まじまじと見上げられ、坂下は改めて考える事を始めた 何処に居るかわかりもしない他の13候補を探し出す それにはどうすればいいのか 言い出して見た割には何も考えがなかったらしい 「……鷹の目を、探してみる?」 「は?」 透子からの行き成りな提案 確かにそれならば近道にはなるかもしれないと思いながらも だが坂下は首を横へと振って見せる 「……鷹の目のそばにはあいつが居るんじゃねぇのか?」 「……多分」 「鉢合わせたらどうする?} その場合何か考えがあるのかと問うてみれば 透子はハッと坂下の方を見やり、そしてどうしようと問うて返してくる 「……何も考えなし、か。ま、全く手掛かりなしってよりはマシだろうし」 追ってみるかと前を見据える まずは鷹の目を探すところから、と そう決定し、歩くことを始めた、次の瞬間 目の前に、赤い水滴が雨の様に落ちてきた 頬に散ってきたソレをぬぐってやれば、それはやけに粘り気があって 近く顔を寄せてみれば水にはない生臭さを感じる これはヒトの血だと気付いたのは直ぐ 何処から降ってくるのか、と上へと視線を向けてみればソコに ヒトの首を咥えた、鷹の目が居た 見知らぬヒトの首、だがその眼の下には13の痣 ダラリダラリと多量の血を流すソレを、鷹の目はまるで見せびらかすかの様に揺らしてみせると その場から飛び立っていった 「追うわ!」 跳ねる様に土を蹴り、その後を透子は追う 坂下も何とか透子について走り出し 暫く走った後、鷹の目の動きがとある場所で止まって 「……また来たか」 鉢合わせることを危惧していたばかりだというのに 予感というものは悪いモノばかりあたってしまうのが世の常だ 「……その首、どうする気?」 透子からの問うたそれに、しては僅かに笑みを浮かべ そして徐にその首を食むことを始めた その口元に滴る血液 顎を流れて伝い、堕ちた地面に赤黒い痕を残していく そのシミの様なそれが段々と広がっていけば ソコに、あの黒い(世界)が湧く様に現れた 「……俺は、救われたいんだ。透子」 まるで乞う様に呟いた後、その手の中に徐に刀が現れ 鈍く光る刃が、(世界)を斬りつける 両断された(世界)、地面に伏したかと思えば相手の足元まで這い どろりどろりと相手の全身を覆い始めた 「……それが、アナタの望みなの?」 歪な姿に成り果ててしまった相手へ 透子は憐れむ様な表情を向け問う事をする だが、その言葉は最早届くことはなく ニヤリ歪んだ笑みをうかべてかと思えば、相手はその場を後に 「待って!!」 後を追い、引き止めようと手を伸ばすが届かず 勢い余った透子はそのまま前のめりに転んでしまう 「……このままじゃ、あの人は救われない。私、私は――」 そのまま膝を崩し座り込み、声を震わせる透子 何故、これほどまで必死なのか 尋常ではない透子の様にその訳を求める 「……あの人が、最初の13だからよ」 「は?」 最初の13、最初の犠牲者 それが何故今の今まで生き、そして他の13を殺そうとしているのか 更に増えるばかりの疑問にまた透子が答える事を始める 「他の13を殺して、自分が救われるため。あなたも、そう言われたでしょ」 直接言われたわけではなく察したのだが もし、ソレで本当に宛がわれた13という運命から逃げ出せるのであれば 誰しもが足掻くのでは、と改めて思う それはきっと、あの男とて例外ではないのだろう、と 「(世界)になる事が出来れば、後は喰うだけ。食われることはなくなる、から」 自分が喰う方に回れば喰われることもない 至極単純な思考だとは思うがその実利にはかなっている 「だから、私は止めないといけないの。あの人を、そして他の13を救うために」 そのためには今何をすべきなのか 考え始めた透子の傍ら、坂下が徐に口を開く 「そもそもこの13制度を作ったのは誰だ?」 「この仕組み?」 「13制度。一体誰がこんな馬鹿けたこと決めた?」 知っているのでは、と透子に探りを入れる坂下 透子は表情泣く坂下の顔を見上げながら 「……この国を統べるべき母、よ」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |