《MUMEI》
初めての気持ち
   〜麗羅視点〜


私はいつも、朝早く学校に来る。


私より先に学校に来ているのは教師ぐらいで、教室には私以外まだ来ていない。


誰も居ない教室は、嫌いじゃない。


静まり返った教室に優しい陽が差し込む、静寂に包まれた世界は落ち着く。




時間が経つにつれ、沢山の生徒が登校してくると教室が活気づいてくる。


活気づいた教室の前方から、誰かが私の方に小走りで向かってくる。


私は本の字を追っていた視線をそっと上げて、それが誰なのかを確かめる。


なんだ……。


昨日の奴A(中原 歩)か。


私は無意識に肩を落とすと、すぐに視線を本に戻す。


私、歩いてきたの誰だと思ったんだろ?


なんで、少し落ち込んでる自分がいるんだろ……?


視線の先には本があるがぼーっと考えごとをしていると、昨日の奴Aの後ろから


「麗羅、おはよ〜!」


っと声が聞こえた。


私は、その声に反応して顔を上げその声の主を確かめる。


その人物と目が合うと何故か、プイッと目を逸らしてしまう自分がいた。


それと同時に、安心する自分に戸惑いを覚える。


今日も、笑顔で話しかけてくれた。


昨日の"また明日"は、嘘じゃなかったんだ。


こんな気持ちになったの初めて……。


どうしてなんだろう?


自分の気持ちなのによく分からない、そう感じるのも初めてで戸惑う気持ちを上手く隠せない。

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