《MUMEI》

小野坂が人に対して何故これ程までに臆病なのか
気にしないつもりでいたソレを、だがやはりどうしても気にかかる
だが小野坂は何を言い出すでもなく、また嫌々と首を横へ振るばかりだ
話したくないのならば無理に聞き出す事はすまい、と
小野坂の頭を撫でてやるとロイドは小野坂の手を取ったまま帰路を進む
「そうだ、良。今日の夕飯は何が食べたいですか?」
暫く歩き、スーパーの前へと差し掛かった頃
ロイドが小野坂の顔を覗き込みながらそんな事を問うてきた
正直を言えば今は何も食べたくはない
その旨を伝えてやれば
「それでも、少しは食べないと……」
身体に障ると僅かに困った風な顔
仕方なく考え始め、そして
「……なら、雑炊」
比較的食べやすそうなソレをリクエストしてみる
小野坂からの答えがあったのが嬉しかったのか
ロイドは顔を綻ばせ、なら材料を階にとスーパーの中へ
様々な野菜を購入し、帰路に着いた
その道中、互いに交わす言葉はなく
家へと着くと、ロイドはそのまま台所へと入っていく
「良、出来るまでもう少し掛りますから」
風呂にでも入って来いと柔らかく促される
小野坂は素直に頷くと着替えを持って風呂場へ
浴槽に湯を張る事はせず簡単にシャワーだけ
降ってくる水滴に身体を打たれていると
それまで考える事を拒否していた頭がぐるぐると色々な事を考え始める
そのすべてが過去、昔
思い出したくもない、その全て
「……でも、アイツは違う。違う、から」
違うはずだと、信じたかった
まずは信じて見なければ何も変わらないのだから
そんな事をぐるぐると考えながら、漸く浴室から出てみれば
食卓の上で雑炊が温かな湯気を立てていた
「出来てますよ。どうぞ」
勧められるままに椅子へと腰かけ食べ始める
身体に染み込む様な柔らかな味
食べていて、何故か泣けて来た
「良?どうして泣くんですか?」
自分がまた何かしてしまったのだろうか、と困った顔のロイド
頬にまで伝い落ちてきたその涙をぬぐってやりながら
どうしたのかを改めて問うてみる
「……俺には、話せませんか?」
吐き出してしまえば、少しは楽になる
そう促してくるロイドへ
それでも小野坂は何度も首を横へ振る
結局そのまま何を言う事もしないまま
小野坂は泣きながら雑炊を食べ進めたのだった……

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