《MUMEI》

中は想像通り広く、廊下の途中に扉が二つあり、突き当たりに一つ。

その更に手前に茶色地に赤の刺繍のある絨毯が一階から二階まで敷かれたスロープ付きの階段。

一番手前の扉にはアカネが入っていったので恐らく居間だろう。

二つ目の扉はわからない。が、こちらも恐らくだが洗面所だろう。

そして奥にキッチン。これは扉が開きっ放しに固定されていて玄関からも中の様子が窺えるので、確実だ。


ハル以外の女性の家には入ったことがないので、どうにも足が滑らかに進まない。何処と無く良い香りがする気がする。

これが女性の匂い、なのだろうか。

ハルの家は俺の家の様な物だし、正真正銘初めての女性のお宅訪問。

だからといって状況が状況なので、そんな悠長な事は易々と口には出来ない。

「カケルー?」

再び急かされ、やっと足が大きく動いた。

アイがにやにやとしているのに気付き、更に早く歩きだす。

そしてアイに別に緊張してません、とでも言う様にアカネの入った扉を開けた。

自分で言うのもなんだが、餓鬼らしいな、俺。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫