《MUMEI》

翌日、私はジュン君の見送りをするため、ジュン君の家の前にきていた。私の父さんと母さんは、ジュン君のお父さんお母さんに挨拶をしている。

「冬、見送りありがとう。」
「ううん。今日は土曜日だしちゃんと見送りたいと思って。」
「律儀だなー。
 そうだ、プレゼント。」
「i pod?これ、だいぶ古いやつじゃない?傷だらけだし」
「その中に一曲だけ曲が入ってんだ。気が向いたら聞いてみてくれ。」
「どんな曲?」
「聞けばわかる。」

引越しのトラックの向こうから、「ジュン、行くわよー」と、ジュン君のお母さんの声が聞こえてきた。

「はーい。今行くよ。」
「・・お別れだね。」
「笑ってお別れって、なんか悲しいな。でも俺は絶対に冬のこと忘れないし、お前も俺のこと忘れないでくれよ。」
「うん。元気で。」
「冬もな。」

ジュン君が身を少しかがめたと思ったら、私の頬に柔らかい感触が走った。

「俺は、冬が大好きだ。じゃーな!」

ジュン君は車の中から私に手をふる。私もふりかえした。
家に戻って、自分の部屋で貰ったi podに入っている曲を聞いてみた

〜君と夏の終わり将来の夢大きな希望を忘れない十年後の八月また出会えると信じて最高の思い出を〜
イヤホンから流れるフレーズ、私の頬を涙が伝った。

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