《MUMEI》
すぽんじ
 「……なぁ、那智。コレ、何のまじないだと思う?」
とある昼下がり
何気なく共有スペースにある流しへと向いて直った村山
ソコに何か違和感のある何かを見つけ、小首を傾げながら前野へと問うてきた
何の事かと前野もソコをのぞいてみればソコに
何故か浴槽を洗うそれが置かれていた
「……風呂用のスポンジ、だな。これは」
「置いたの、那智?」
「んな訳ねぇだろ」
流石にそんな間違いはしないと返してやれば
前野らの視線はロビーにて課題に取り組んでいる岡本へと向く
「……二人共、どうかした?」
その視線に気づき、岡本が顔を上げた
そして二人が何を言わんとしていたのかを察し
「……それ、食器洗い用じゃ、無かった?」
上目使いで問うてくる
そこで二人漸く現状を理解した
「……千秋、コレちょっと惜しかったね」
「惜しかった?」
どういう事か、と更に問う様に小首を傾げる岡本へ
前野は岡本の頭へと手を置いてやり、髪を掻き乱してやりながら
「……コレ、風呂掃除用だ」
その実を告げてやる
その後、暫くの間をおいた後
岡本が徐に立ち上がり、流しに置いていたソレをとると無言で浴室へ
入るなり、暫くソコに立てこもった
「照れたのか。珍し」
「しかし、普通間違えるか?風呂用と食器用のスポンジ」
「そこが千秋らしくない?」
はたしてソレで済ませてもいいものか
穏やかに笑みを浮かべるばかりの村山の傍ら
つい頭を抱え、前野は僅かに溜息を吐くばかりだった……

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