《MUMEI》 聞くに疑わしいソレを返してきた ソレをつい表情に出してしまえば 「……彼女は、夢を見たそうよ。この国が滅ぶ、恐ろしい夢を」 「夢、か」 「そう。そしてその夢の中に現れた黒い何かが彼女に言ったそうよ」 救いたければ、ヒトを差し出せ、と 続けられたことの葉に坂下は眼を見開く その黒い何か、それは 「……そう。(世界)よ」 聞かされて、やはりと坂下は思った その夢こそが、すべての始まりだったのだと 「……背負うものが大きければ大きい程、生じる隙も大きい。彼女はソコに付け込まれたの」 全てを守ろうと足掻いた結果、その全てを壊そうとしている 皮肉でしかないソレに、坂下は深い溜息を吐くばかりだ 「……皆が皆、アナタみたいに強いわけじゃない。特に(彼は)」 立ち上がり、付いてしまった砂埃を払いながら 透子は前を見据え、行きましょと坂下に促す その横顔は何を憂えているのか 分かる筈もなく、坂下は唯々、その後を付いて歩くしか出来なかった…… 前へ |次へ |
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