《MUMEI》

「わ、私も居ます!」

俺の肩にいつの間にかとまっていたアイが身を乗り出して声を上げた。

ハルが驚いた顔をする。

多分、俺も似たように目を丸くしているんだろうが。

「…あ、あぁ。そうね。」

仕切り直す様に、妙な空気を裂く。

「そう、一手は俺。二手はハル。三手はアカネ。四手はAI達だ。」

「じゃあ、私は西に行く。知り合いが多いの。」

アカネが挙手を小さくしながらおずおずと提案した。西といえばこの家の近所だし、探し易いだろう。

「私は東へ。」

ハルがアルトの髪を撫でながら呟いた。

アルトを見る瞳は本当の我が子を見る様に愛おしそうだ。現にそうなのだろう。

「…じ、じゃあ…僕は南に…行くよ。」

聞き慣れない声に顔を向けると、アカネの妖精、メグミが顔半分を主の腰ポーチに埋めながらもじもじとしていた。

素直に嬉しいな、と思う。

今日一日で色々な事がありすぎたが、こんなにも良い出会いに巡り会えた。それだけで儲け物だ。

「じゃあ、私とアルトも南へ行きます。」

「お前っ勝手に決めんなよ!」

西がアカネ。

東がハル。

南が妖精達。

ならば俺は必然で残りの一路だ。


「俺は北へ。」


密かに妹の名前を心で呟いた。

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