《MUMEI》
他のほもっぷるを目撃したバカップル。
「『あ゙っ』」
俺と旭(あさひ)は同時に声を上げた。

…キスをした。行き付けのスーパーで偶然目撃した仲良さげな男性二人連れ。


「なぁなぁ、八尋(やひろ)。あの二人、今キスしたよな?」


『う、うん。』


…マズイ。旭の、このテンション。次来る展開が手に取る様に分かる。


「ん!オレにもぉ!」

…ほらね、目を閉じて、口をタコの様に俺に付きだして。本当、単純お馬鹿。

溜め息を1つ吐き、俺は手にしたソレを旭の唇に押し当てた。


「んんっ、八尋くんの唇、冷たくて滑ってる…って、コレ…“なまこ?!”」


『正解!』


「八尋くん、酷い。」


『あ゙?殻付きウニが良かったか?』


ケチ、イケズ、等とブツブツ呟き、俺の横を歩く旭。本当、昔から変わらない。デカイ図体なのに子供みたいだ。これで学校の先生だって言うんだから、笑いが込み上げる。まぁ、俺も幼稚園の先生だったりするけど。


『旭。俺たち、なんで安月給を倹約して金貯めてるんだっけ?』


「将来、同性結婚が認可されてる国で夫婦になる為。」

『…だよな?公衆の面前でキスなんかしたら、お互い職失う危険があるんだぞ?』

そう、だからご近所の此処でキスなんかしたら、生徒や保護者様に見つかり大問題なのだ。
…本当は、俺だっていちゃいちゃしたいんだけどさ、今は我慢、我慢。

うん、わかった。とシュンとして俯く旭の背中を叩き、レジに並ぶ。


『だから、早く家に帰ろ?俺達の二人だけのお城にさ。』


俺の言葉に、ぱあっ、て顔を輝かせた旭。買い物袋を持つ俺を引っ張る。

『ちょ、旭。危ない、あっ』

言わんこっちゃない、俺は転んで足を捻ってしまった。


「八尋、ごめん。」


旭は、素早く俺の前にしゃがみ、ん!おんぶと背中を差し出す。


…足も痛いし、まぁいいか。と素直におんぶされる。


「なぁ、八尋。今夜のおかずは何?」


『ん、今夜はさっきので、卵が割れちゃったからオムライス!』


「やった!大好物!じゃあ、ケチャップでデッカイハート付けてな?なっ?」

旭の広くて居心地の良い背中に揺られながら、はいはい!と返事をした。


おしまい
*****

スミマセン。こんなんで。おき逃げします。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫