《MUMEI》
嫌悪
「はぁ?」

佐伯は少しイラついたような顔で、私を見た。

「アンタの周りって、いつも女の子でいっぱいだもんね?俺モテるんだ、とか思ってるでしょ?」

「なに?妬いてんの?」

怒り?恐怖?
なんなのかわからないけど、私の手は震えていた。
それが佐伯にバレないように、手を後ろに隠す。

「妬いてんのはアンタでしょ?眞季だけだもんね?アンタから付き纏ってんのに相手してくれないの。プライド傷付いちゃってる?」

佐伯は何も答えずに、歪んだ笑みを浮かべながら私を馬鹿にしたように見ている。

「自分がホモだからって、あたしたちを変な目で見ないで、それにアンタが女の子たちに相手してもらってんのってアンタの親がお金持ってるからでしょ?」

外に聞こえているんじゃないかと思うくらい、心臓がバクバクいっていた。

「親がいなかったらアンタみたいな中身の無い薄っぺらい人、誰も相手にしないよ、自分に魅力ないこと自覚して自惚れんのやめたら?」

「へぇ…じゃあ眞季ちゃんは魅力あるんだ?変態なのに」

「当たり前でしょ!眞季はアンタみたいに人を傷付けて楽しむような人じゃないの、眞季は変態なんかじゃない!一緒にしないで!」

「ふぅん…」

そう言ってニヤニヤ笑う佐伯を尻目に、私は眞季の元へ向かった。







私は佐伯が、大嫌いだった。
人を馬鹿にしたように見る目も、自信に満ち溢れた態度も、眞季を傷付けて愉しむ姿も…全てが兄と似ていたから。

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