《MUMEI》
現実
…──


ある日の学校帰り、私は眞季の様子を見に眞季の家に行った。
佐野さんと出会って、眞季がどう変化したか確認して、少しでも安心したかったのだ。

けど眞季は、部屋に入って欲しくなさそうにしていた。
いつもなら喜んで入れるのに…。

そんな眞季を見て私は、入らなきゃと思った。


私に見られて困る物。
眞季が自分の部屋に、隠し続けている物。


それは、あの日盗んだ私の物。

あの日見た、私の物が眞季の部屋にあると思った。

今ならそれを見ても驚かずに、突き詰められると思った。
突き詰めて、もう関わりたくない、そう言おうと思った。






けど眞季の部屋に、それらしき物は見つからなくて、パソコンから女の人の悲鳴が聞こえてくるだけだった。

画面の中の女の人は裸で縛られて、その体には見たこともないようなものが、たくさんつけられていて、所々が赤黒くなっていた。

(……血?)

そのグロテスクな画面を、あまり見ていられなかったけど、動揺しているのを気付かれたくなくて、私は近くに落ちていたDVDのパッケージを拾った。


『監禁、拷問、飼育』


どのパッケージにも、そんなことが書かれていた。


怖がりな眞季に、こんなことをするのは、佐伯だろうと思った。
中学を卒業しても、眞季は佐伯に付きまとわれているんだ、と。





でも──……






現実は違った…?


私は佐伯の“いじめ”に便乗して、眞季をからかった。
パッケージに書いてあった文字通り、拷問を受けている女性と自分を重ねているんじゃないか、と。

それは、強ち間違ってはいない推測なんじゃないかとすら思っていた。
ずっといじめられてきたから、いじめに対して性的興奮を覚えたのか、とも思ったのだ。

もっと性的ないじめを、受けたいと思っているのかと思っていた。






あれを見て、私を想像しているなんて考えてもみなかった。

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