《MUMEI》

「それじゃ、改めて行こう。」

少し張りつめた空気が俺を纏う。消えきらない不安が、一つだけあった。


見つからなかったら?


しかし、そう言っている暇も余裕も、生憎今の俺は持ち合わせていない。ならば進むべき道、方法は一つのみだ。

全力を尽くして祈り捜す。

それだけだ。

アカネの家を出て方位を確認するために、ミリオンマップを開きクラリネスを拡大し、現在地を確認する。

「流石に広いわね。今から夜までじゃ無理があるわ。」

ハルがマップから目を逸らさずに言う。ルートを予測しているのだろうか。

「じゃあ…八時にアカネの家。方位の確認は済んだな?」

迷想する間も無く堂々と頷く。

頼もしい仲間達だ。

「それじゃあ、解散!」

俺が言うと、それぞれの方角へ一瞬にして姿を消して行った。

いや、正確に言うと妖精組は一瞬にして消えた。例によって電脳世界とやらで情報から捜索しているのだろう。

それにしても、アカネは速い。

ハルが俺と同じくらいなのは知ってたが、アカネも速度ステータスをかなり中心的に上げてるのだと思う。

などと直ぐに考えてしまう自分に滅入る。いつからこんな自分だったか、と。


しかしそんな思いも沙弥の面影にかっさらわれた。

決意を示す様に、靴の紐を一度ほどき、更にきつく縛った。

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