《MUMEI》

俺にしか出来ないこと、わからない事があるじゃないか。

そう、それは容姿だ。

皆に外見の説明はしたものの、本当の沙弥を見ただけで解るのは、この世界では俺だけ――…だと、思いたい。

ならば、それを使わずにどうする?

「確か…!」

思い付くや否や、俺は腰に下げてあまり使い時のないアイテムポーチに片手を突っ込み、中も確認せずに貪った。

そして予想通りに、直ぐ様お目当てのアイテムを発見した。

双眼鏡の様な形をしたそれは、《千眼鏡》と呼ばれるアイテムだ。これは消費型じゃないので、《飛躍の翼》の様に使った後に粒子化しないのが嬉しいところだ。

そしてその《千眼鏡》なるものは、名前から想像がつく様に、千里を見透す眼鏡だ。

つまり、どれだけ遠くのものでも、一度行ったことのある場所ならばいつでもその眼鏡に現在の状況を映すことが出来る、という優れものだ。

価値はかなり高い。

俺の今所持している金額プラス《紫光 ドゥーカス》を売りさばいた位の額だ。

まあ、俺も過去に譲り受けたモノだが、今はそれに感謝しよう。

「さて、と。」

一度深く強く目を閉じてから、ゆっくり開き、《千眼鏡》に目を当てる。

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