《MUMEI》

 翌日、小野坂は突然に熱を出していた
朝、中々起きてこない小野坂の様子を見にロイドが部屋へと入れば
ベッドの上で蹲っていて
どうしたのかと額へと手を当ててみればソコは酷く熱かった
「良、大丈夫ですか?」
顔を隠してしまっている前髪を掻き上げ、覗き込んでやれば
熱の所為か、ぼんやりとした視線が向けられる
「――っ!」
だがすぐにその眼は見開き
どうしたのか、小野坂は明らかに怯えの色を見せ始めた
「良?どうか――」
したのか、とは最後まで聞くことはできなかった
喉の奥を擦るような声を微かに上げながらロイドと距離を取ろうとする小野坂
明らかにおかしいその様に
ロイドはその腕を半ば強引に取り引き寄せる
「良、どうしたんですか?」
強く肩を揺さぶってやれば、小野坂は首を横へ
何かを否定するかの様に何度もソレを繰り返した
「兎に角、落ち着いてください。ベッドに戻って」
何とか小野坂の身体を押し戻してやり布団を掛けてやる
トントンと優しく宥めてやる様に布団を叩き
何か飲み物でも持ってくるからと踵を返した
その背が台所へと消え、そしてすぐに戻ってくる
「お茶、ここに置きますから。飲んでくださいね」
軽い音を立てカップを置くと、ロイドはまた身を翻す
何処へ行くのだろう
そのまま部屋を持そうとするロイドの服の裾を咄嗟に掴めば
ロイドが、その脚を止めた
「俺が居たら、ゆっくり寝られないでしょう。だから、隣の部屋に居ます」
何かあれば呼んでください、とのロイドへ
小野坂は掠れた声で何でを返す
「何でって、だから――」
再度、その理由を続けてやろうとした瞬間
小野坂の手がロイドへと伸びてくる
「……お前なら、いいから」
引き寄せられたかと思えば、そんな言葉
暫く考えた後、ロイドは困った風な笑みを浮かべながら
小野坂へ解りましたを返してやる
「俺は、どうしていればいいですか?」
ベッドサイドへと腰を降ろせば、、小野坂はロイドの手を取り
自分の頬へと宛がう
ヒトのソレとはまるで違う温度
だが、それが今の小野坂にはひどく心地いい
「……ヒトは、苦手、だから」
「良?」
熱に浮かされながら小野坂が呟いた言葉
一体、どうしてなのか
求める様に差し出された手を取ってやりながら
ロイドはそればかりが気に掛る
「良。聞いても、いいですか?」
聞くことで、もしかしたら小野坂を更に傷付けてしまうかもしれない
だが、知る事をしなければ受け止めてやる事など出来ないのだから
「あなたに、一体何があったんですか?どうして、そんなに――」
他人に対して頑ななのか
聞いて途端、小野坂は身体を強張らせる
以前なら、ここで聞くことはやめていた
しかし、今日は
「話して、下さい。それがどんな事だったとしても、俺はあなたを軽蔑なんてしない」
決して引いてやる事はしなかった
小野坂の手を引き寄せ、その身を抱く
縋ってもいい、今だけは、この機械の前だけなら泣き崩れてもいいのだと
「……ロイド、俺……」
鼻を啜りあげながら、小野坂はゆるり話す事を始めた
それは幼少の頃、気を許していた年上の幼馴染から性的な暴力を受けたのだ、と
元より人と拘る事が不得手だった小野坂にとっては受け入れがたい出来事
身体より心が、酷く傷んだのを子供心によく覚えている
「……他人は、いつか絶対に裏切るから」
だから嫌いだ、苦手なのだと小野坂
それから先は涙が滲んで言葉にはならなかった
「俺は、どう在ればいいですか?」
他人が怖いという小野坂の傍ら自分はどう在ればいいのか
抱いた腕を一度離し僅かに距離を取る
測り兼ねているその距離感に
触れようとした手は、だが寸前で止まる
「やっぱり、俺なんかには触りたくなくなったか?」
触れられずにいたソレを小野坂はそう受け取ったらしく
自嘲気味に笑みを浮かべていた
そんな顔を、させたい訳ではない
伝わらないその意図にロイドは焦れ、小野坂を若干手荒く抱き返す
「……機械と言っても俺には感情も、そして欲もあるんですよ。良」
「ロ、イド……?」
どういう事かを問いかけた小野坂の唇をロイドが小野がソレで塞ぐ
その行為に驚き眼を見開く小野坂

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