《MUMEI》

確かに《千眼鏡》で見た方が早いかもしれない。しかし《千眼鏡》とて万能ではない。

行ったことのある場所は見れるが、行ったことのない場所だとミリオンマップに記載されていたとしても見れない。行ったことのある場所と言えども、行ったことのある街では決してない。

首都 クラリネスは至るところに店があり、外観も綺麗で華やかなので行ったことのない場所はないが、これが隣街のゼニウラクルなら別だ。

隣にクラリネスというプレイヤー御用達の街があるからか、クエストの為に立ち寄る事は多少なりともあるにはあるが、それ以外に立ち寄る事は一切無い。

ゼニウラクルが嫌な街という訳ではないが、例えば俺はそこの四分の一以外の場所を巡っていない。

そうしたら、そこで《千眼鏡》が見えるのは四分の一のみということだ。

この範囲も曖昧で俺も詳しくは理解しえて無いが、大方は間違っていないだろう。

「やっぱり、有名店巡りかな。」

あいつの性格上、このゲームを始めたばかりでモンスターのいる外壁外を彷徨うのは有り得ない。

おまけに、人気の少なそうな店や通りも回避するだろう。
その条件で探すなら、常に人が店を出入りしていて、活気がありそうな店や通りが集中している、区分的には中央らへん。

そこら辺は皆も曖昧になっているだろうし、丁度いい。

そこで、一瞬手に持った《千眼鏡》に迷いの視線を向ける。


いや、だめだ!


熟考した挙げ句、少し乱暴にポーチに押し込んだ。

やはり、みんなが頑張っているのに、
一人だけ楽は出来ない。それに、ここからは視界が悪くなる一方だ。

ならば《千眼鏡》で見逃すところも出てくるかもしれない。

目指すはここから南、中央!

「ふっ。」

数歩歩いて歩幅を合わせてから、隣の屋根へ、又、隣の屋根へと足を運んだ。

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