《MUMEI》
瞳に浮かぶ虹。
病院の待合室で、声をかけられた。


「宮園?宮園春樹だろ?ひさしぶり!」


声のする方へ耳を傾ける。俺は今、失明中。夏休みにバイクの事故で、両目の角膜を傷付けて。角膜移植すれば見える様になるらしいが、それも気の遠くなる程の順番待ち。目下車椅子生活でリハビリしている。


だから、突然話し掛けられても誰が誰やら分からない。眼帯は外れてるから見た目は見えてるぽいから、皆話し掛けるんだけどね。はて、この声。聞いた事あるんだが、誰だったかな?


『ごめんね。俺、今失明中なんだ。怪我してさ』

「え?そうなのか。ごめんな、えっと俺だよ。中学ん時一緒だった。あの…夏…」

『あ、夏?もしかして甘夏?甘木夏臣だろ?』

「………。」

『あれ?違ったか?』

「あ、いや。うん、そうだよ。」

『やっぱり?甘夏?なっつかしいなぁ、元気してたか?高校別になっちゃったからなぁ。』


中学時代の同級生、甘木夏臣は、甘いマスクで皆を魅了した人気者。甘夏の愛称で、フアンクラブまであった程だ。


「そっか。バイク事故でか。リハビリ大変だな。」

『甘夏は、なんで病院に?どっか悪いのか?』

「あ、いや。母さんがね、入院してて。雑用に呼ばれるんだ。」

『あぁ、お母さんが。甘夏もお世話が大変だな。』

「俺、結構毎日顔出してるからさ、話し相手になってやるよ。暇だろ?」

『マジ?やった。退屈で仕方なかったんだ、実は。』


その言葉通り、甘夏はほぼ毎日の様に俺の部屋を訪れ、話し相手になってくれ、天気のよい日には車椅子を押して、庭や屋上にも連れ出してくれた。

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