《MUMEI》

俺の出生を話して明日には村を出ると言った俺
のために宴を開いてくれた。急拵えの小さな宴
でもとても嬉しかった。


カ「シド、本当にいいのか?」「うん」
カ「もしかしたら嘘かもしれないんだぞ」
「ならさ、ロイドさんを信じた俺を信じてくれ
よ」
カ「!!……はぁ、道中気を付けろよ」
「ありがとうカイン」


次の朝、村の入り口で見送られ村を出た。エレ
ナさんの涙に一瞬迷ったが、男に二言はないと
振り切った。カインからは背中を叩かれ、次に
会うときは成長しろよと言われ、抱きつくふり
をして思いっきり腹を殴ってやった。


森を抜けてすっかり村の姿は見えなくなった。


ロ「……後悔していますか?」
「いや、寧ろワクワクしてる」
ロ「わ、ワクワクですか?」
「世界は広い事を実感したいんだ。本を読むだ
けではまだまだ知らないことが多いからな」
ロ「!」


――ロイド、本の中が全てではない。世界を見
るんだよ――


ロ「貴方は間違いなくアダンフォード陛下の血
を引く方ですね」


いきなり私の前に跪いたロイドさんに驚いた。

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