《MUMEI》 答え合わせ私達は普段寄らないようなちょっと豪華そうなイタリア料理店に来ていた。 −−そう、あの時と同じように。 「やっぱりこういう店はスパゲティー一つをとっても美味しさが違うよな。雰囲気とかってのもやっぱり味に関係するんだな」 「そうですね。美味しいです。疲れた頭に調度良いです」 私のこの言葉の意味を山本は理解してくれたようだ。さすがエースと呼ばれることはある。 「疲れた?いったい何をしてたんだ」 「いろいろと考えていました。山本さんが私に何を求めていたのかも分かった気がします。私が出した答えを聞いて下さい」 「ああ、つまらなかったら退屈女と呼ばさせてもらうがな」 ちょっといたづらっぽいところはいつもと同じだ。 「この事件について考えました。そして山本さんはあることに気がつきました。そうですよね」 山本は肯定もしなければ否定もしなかった。ただ黙って私を見ている。私の成長を見ている。そして私の覚悟を見ている。 「私はこの事件は高科一人ではなく共犯者がいると思いました」 「ははは、そんな事を考えていたのか。それで?」 「よく考えたらやっぱり違うと思いました。私は何を考えているんだろうって思っちゃいましたよ」 山本は笑いながら聞いている。 「一つ山本さんに聞きたいことがあります。明日から高科の取り調べをどういう風に進めていこうと思ってます?」 「そうだな、事件を起こした時の状況とか何を考えていたかを聞き出すつもりだよ」 「それは高科が犯人ではないと分かっていてもですか?」 山本の持っていたフォークがピタリと止まった。 それでも笑顔は崩さなかった。 「……そうか気がついたのか」 −−それは私が想像していた中で1番聞きたくない言葉だったかもしれない。 だって私達は探偵でもなければ警察でもない。真実を知ればそれで終わりじゃないんだもん。 そこには山本が私に真実を言えなかった理由があった。悲しさに包まれた悲しい事件。そして譲れない想い、覚悟。そんなものが詰まった事件なんだ。 そう、これは私と山本と高科だから複雑なんだ。 私達はきっと三角形で四角形で四角錐なんだ。 その意味を知る為に私はこれから立ち向かわなければならない。 私達がいつか求めていた答えがそこにある、そんな気がする。 前へ |次へ |
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