《MUMEI》 同い年なのに〜歩視点〜 麗羅ちゃんと蝶野が教室から去って行くと、教室は静寂に包まれる。 麗羅ちゃん最後までカッコいい!! あんな酷いこと言われたのに……。 沈黙を破ったのは、懲りない女の子達。 「ってかマジ性格最悪なんですけど!! 自己中にも程があるだろ!!」 俺は、我慢できなくなり女の子達に近づいて行き、手をあげようとした瞬間。 パシッ―― 後ろを見ると海が俺の手を掴んでいた。 「海!!」 離せと言わんばかりに手を振り払おうとすると、海は更に手に力を込めて俺の腕を下ろす。 そして俺より少し前に出て、女の子達を見据える。 その時の海は、いつもの海からは想像も出来ない位、冷たく真剣な表情をしていた。 「分かってる。でも殴ったって麗羅ちゃんは喜ばないよ」 表情よりは、幾分か優しい声で俺を諭す。 俺は、視線を下に落とし唇を噛み締め頷く。 俺を諭すと海は、女の子に向かって話し始める。 その声は、その場の空気が凍りそうな程低く冷たい。 「言い過ぎだから。言っていいことと悪いことの区別もつかないの? それと本当に麗羅ちゃんが傷付いてないと思ってるの? 傷付かない人なんていない。そんなことも分からないなんて可哀相な人達だね」 口調自体は、落ち着いていてトゲのある言葉でもなかったが何となく背筋が凍る感じがした。 女の子達は、ぐっと唇を噛み黙り込んで何も言わなくなった。 そんな女の子達の様子を見て、冷たい視線を送ると海は踵を返し、俺の腕を引っ張って歩いていく。 「ちょっ!?どこに行くんだよ?」 海に引きずられながら慌てふためく俺。 「麗羅ちゃんの所に決まってるでしょ? 麗羅ちゃん今頃泣いてる。好きなら一緒に居てあげなよ」 俺の様子を気にする様子もなく、海はあっけらかんと言う。 海は、すごい大人だなぁ……。 俺は、何も考えず暴力を振るおうとしたのに。 酷いことを言われた麗羅ちゃんを気遣うよりも、麗羅ちゃんに酷いことを言った子たちに矛先を向けてしまっていたのに。 同い年なのに何でこんなに違うんだよ……。 好きな子のために何も出来ない自分が、とても無力で子どもに思える。 そんな時ふと頭をよぎった疑問。 「なぁ?麗羅ちゃんどこに居るんだ?」 「…………」 何だよ! その沈黙!? 前へ |次へ |
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