《MUMEI》

滞っていた政務も落ち着き、外交も安定し、帝
国では穏やかな日々が続いた。


「ドーソン、調子はどうだ?」


声をかけた中年男性は八百屋「ドーダナ・シャ
イス」の店主で男性は顔を向け、ニッコリと笑
った。


ド「陛下!また御越しくださったのですか」
「今はシドと呼べと言っていただろう?」
ド「あ、そうでしたね、つい」


こうやって城下町に出向き、民と気楽に話が出
来るようになったのも最近で、降りた頃は怯え
ながら頭を下げていた。


歩けば皆遠ざかり、声をかければ青ざめ、笑え
ば驚かれ、怒れば泣いて許しをこわれ流石にこ
れはないと思い、避けられても諦めず積極的に
接していった。子供と遊ぶようになってからは
早かった。(子供の力は偉大だ)前の王とは違う
のだと分かってもらえて、今では敬語ではある
が笑って話が出来るようになった。(20歳と言
ったら皆、凄い目で見てきた)

「で、どうだ?」
ド「お陰さまでシド様に教わった通りに畑を耕
したため、立派な野菜が取れ、種類も格段に増
え作るのも売るのも楽しく過ごせていますよ」
「ここの野菜は城の者にも好まれているからな。
夏は収穫も多いだろうからちゃんと休むときは
休めよ?」
ド「はい、心得てますよ」


食料捕獲のため始めに取りかかった畑復活で、
そのときのドーソンを含む野菜(果物)を作って
いた六人と話をしたとき、作っていた野菜の種
類の少なさに驚いた。


村で作っていた物より少ないそれに呆れたが、
人数も場所も沢山あるので村よりも立派なもの
を作ると目標をたてた。広い場所を取るため帝
国の地下に広大な畑を作り出し天候や季節も魔
法で管理して、様々な野菜を大量に作ることが
可能になった。


二年後にはすっかり形になり、
今では畑の広さと野菜(果物)の種類と知識に戸
惑っていた六人も仕事を分担して店を出すよう
になりその姿は様になっていた。

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