《MUMEI》
「夢」から覚めて・・・1
電線の上でスズメらしき鳥がさえずっている。余りにもありきたりな朝であるが、朝だった。
神夜氷華は、昨日見た「夢」をことを考えていた。たいていの夢は、起きたすぐであってもあまりはっきりとは思い出せないらしいが氷華は鮮明に覚えていた。まるで、記憶のように。何故か物心ついた時からそうなのだ。  
氷華は高校に行く準備を始めた。教科書やノート、そして所属している剣道部で使う面タオルや、藍染の胴着をビニール袋の中にそっと入れた。それから食パンを冷凍庫から取り出し、凍ったままかぶりついた。食べ終わるともう一枚、同じようにして食べた。         
食事が終わり、氷華は鞄を持って誰もいない家から出、「いってきます。父さん、母さん。」と言い、鍵をかけた。
氷華の通う九流川学院は、全児童に自転車通学が許されている。氷華は昼食のパンとおにぎりを買おうとコンビニの前で自転車を止めた。   氷華は中にはいるとすぐに左奥にある「お弁当コーナー」へ行こうとした。
しかし、店の中には何一つものが存在していなかった。
一つぽつんと店の中央にある、入り口に背を向けている椅子以外は。               

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