《MUMEI》

俺が珍しく政務を片付けていると見知った人の気配を感じた。
「イズモか」
イ「頼まれたものを持ってきた」


忍のような黒い衣と長い口元を隠す布を巻いた
少女が音もなく現れた。彼女は東の山陸にある
隠された村に住む暗殺部族として有名な「ムサ
シノ」の若きリーダーで、当初は私を暗殺しに
来たが、私は忍者だ!始めてみた!と興奮して
しまい暗殺者だと言うのに好奇心剥き出しで話
しかけていた。彼女は困惑して戸惑っていたが
キラキラと目を輝かせる俺に毒気を抜かれてい
た。話を聞き、村を人質に取られ、暗殺を失敗
すると村を壊されると聞き、懐かしき忍=日本
文化を壊させてたまるかと一人依頼人の元へ行
き制裁を下した。そんなこんなで私に忠誠を誓
った彼女は俺の部下としてとても良く働いてく
れて、今回ジオーズ・カフェへお使いに行って
もらっていたのだ。


「おお、これこれ、ジオーズのクッキー!あり
がとうイズモ」
イ「それから主にジオ殿から言付けが」
「?何だ」
イ「相談したいことがあるため、時間があれば
店に来て欲しい。と」
「相談?……よし、行くか」
イ「仕事……」
「後回しだ。民が助けを求めるなら助けるのが
王だろう。心配ならお前も来い」
イ「……分かりました」


転移魔法で一瞬でジオーズ・カフェの前に飛んだ。


カランカラーン


ジ「シド様!来ていただけたのですね。あ、貴
女はさっきの!」
「相談と聞いたが?」
ジ「実は彼の事なんです」


そこにいたのは地味だがそこそこ高価な服を着
た青年が立っていた。


「彼は?」
ジ「ノルアードの兄弟国でイビルニードの2番
目の王子なんですが」
「イビルニード国、貿易が盛んな国だと聞くが、
その王子が何でここにいるんだ?」
ジ「それが、逃げ出してきたんです」
「……は?」
?「おい、ジオ。さっきからそいつと話してる
が何だ?」
ジ「彼は…」
「初めまして。俺はジオの友人のシドだ」
イ「イオル・ダノ・イビルニードだ。ジオ、ま
さかこのガキがお前の言う助けてくれる人か?」
ジ「そうだよ」
イ「おい、ふざけるなよ。こんなガキに何がで
きるんだよ!」
ジ「彼はそんなんじゃ……!」「取りあえず落ち着け。ジオ、詳しく説明しろ」


イオルがいるため臨時に店を閉めた店内は俺達
しかおらず、席に座り話を聞くことになった。


「……つまり、政略結婚から逃れるためにジオ
に助けを求めたと?」
ジ「人伝に聞いて場所を知ったらしいのですが、
私はもう……」
「成る程な……」


俺は離れた場所にいるイズモに視線を送り、一
つ頷くと一瞬で店から消えた。ジオとイオルは
気付いていない。


イ「頼む、ジオ。助けてくれ!」
ジ「だから僕はもう王子じゃないんだ。無理だよ」
イ「大丈夫だよ!ジオが言ってくれれば父上も
きっと考え直してくれる筈だ」
「……まさか本気でそう思っているのか?」
イ「ああそうだ!何が助けてくれる人だ。とん
だ期待外れじゃないか」
「期待外れなのはお前のほうだ」
イ「……は?」


雰囲気の変わった俺にイオルは呆け、ジオは青
ざめた。


イ「俺が期待外れだと?」
「お前はジオや俺に何を求めている」
イ「何って助けを……」
「一般庶民にか」
イ「だ、だがジオは元王子で」「その元王子の話を現国王が聞くと思っている
のか。お前はジオを辱しめるつもりか」
イ「辱しめる?」
「国を滅亡まで追い込み、庶民に落ちぶれた彼
は他から見れば笑い者だと気付かんのか!」
イ「……あ」
ジ「……」
「例え話を聞いたとしても何の力もない彼には
どうすることもできないだろう」
イ「じゃあどうすれば……」


本当に困ったような彼の表情に只、結婚が嫌な
だけではないように思え、どうするかと考え込
んだ俺にジオは頭を下げた。


ジ「お願いしますシド様。彼を、イオルを助け
てくださいませんか!」
「!!」
イ「ジオ…何を…」
ジ「お願いします!」
「……ジオ、頭を上げろ。俺は他国には干渉し
ない」
ジ「……っ」
「……だが、民が願うなら、力になろう」
ジ「!!ありがとうございます」
「と、なれば行くぞ」
ジ、イ「え?」
「何を呆けている。イビルニードに決まってい
るだろう」
ジ、イ「ええぇ!?」

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