《MUMEI》
Spring nation...
深い緑の森をずっと歩く
たまに吹く風が、妙に冷たく感じる


そういえば、今は真夏日のはずなのに、むしろ春中頃のちょうど良い暖かさが感じられる

お陰で水に濡れたカーディガン姿は寒かった…

やがて、光が広がる広場へでた
「何も…無い」
一面には土の風景が広がるだけ、周りは相変わらず大きな植物が生い茂っている

「リョータ君も、アスカ君も一体どこに…」

早く誰かに会わないと、不安で堪らなかった
広場を真ん中辺りまで進むと、突然、右側の植物が大きな音を立てて倒れた
「何…!?」

目の前に現れたのは、巨大な雑草の集まり…?
言い換えるなら、雑草の巨人と言った方が正しい
まるで、日曜の朝にやる特撮ヒーローの巨大ロボみたいな


巨人とふと目が合う
「…ヤバい」
一瞬でわかった
ボクは全速力で逃げた

が、それも無駄だ
巨人は腕…のような草をボクの身体に巻き付けた
「いやッ…!離して!」
足掻いても意味は無い、このままボクはどうなるんだ?
訳の分からないまま死んじゃうのかな?


いろんな思考が頭を巡る
巨人はボクを天高く持ち上げた
怖くてギュッっと目を瞑った



―瞬間



衝撃



ボクは翔んだ



驚きで眼を開ける



もう一体の…巨人
こっちは例えるなら、巨木
力強く大地に根を張る、巨木
樹の巨人の腕は、雑草の巨人を貫いていた


ボクは変に冷静だった
ハッキリとわかったのは、樹の巨人の肩に

白い、少年が立っていた

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