《MUMEI》
Spring nation...
「うわあああ!?」
ボクは助かった…というよりも、むしろ生命の危機に直面していた

地面に向かって落下するボクを、樹の巨人は手のひらで迎え入れる

ドンっと、尻餅をつく、痛いけど地面に激突するより遥かにマシだった

が、直ぐに振り落とされそうな位に大きく揺れる


雑草の巨人はまだ生きていた
植物の強靭な生命力だろうか…

雑草の巨人は葉の先を爪の様にして襲いかかる

肩に乗っている白い少年は、雑草の攻撃にも怯えず、こう口にした
「鳥眼目(バーズアイ・メープル)」

その言葉に呼応して、巨人の木の腕に、鳥の眼のような木目が盾の様に拡がる


ガガガガッ!と激しい音を立てながら、雑草の攻撃を防いでいた


その光景に見とれている間に、彼は私の側に来ていた

「あ…君は……」
「ここは危ないよ、さぁ、こっちへ」

差し出された手を握ると、スウッと不思議なふわふわした感触に包まれた
「しっかり掴まってて」

身体が光に包まれた

と思った瞬間、私達は凄い勢いで樹の巨人の胸の中に入った

「え…?ええっ!?」
不思議な木製のシートの上に召還され、そのまま座り込む
左右には赤い球体が光を放っている、そして、眼前には、あの雑草の巨人…
「大丈夫、ここはカエデの中、心配はいらないよ」
彼は後部の座席に座っていた
「カエデ…って、あの木の楓?」
「そうだね…ん?」


彼は巨人の変化に気が付いた
そう、カエデという巨人から花が咲いている
「まずい、もう開花か…実をつける前にケリを着ける!」
左右の玉に手を奥と、また言葉を叫んだ
「針葉の剣(ジャマバダル)!!」

巨人の腕の葉は鋭さを増し、楓の葉の様な短剣と化した
カエデは轟声と共に降り下ろす


雑草の巨人は2つに割れ、中から核の球体が現れた



すかさず、貫く


とたんに雑草はざぁっと砂の様に崩れ、跡形も無くなった


辺りには、静寂が戻った

「何なの…一体」
後ろの少年は操縦管らしい玉から手を離すと、改めて私に話しかけた

「ようこそ、春の国へ異世界の人よ」

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