《MUMEI》 言われた途端、納得する自分と驚く自分とが心境の内側で交差した。 昴はそういう奴だった。 昔から俺がやったことを越えようと努力し、現に抜かされたものもある。 そして、ミリオンヘイムオンラインについてもそれは同義だったのだ。 俺がこれにのめり込み出したと同時に昴も購入し、寝る間も惜しんでプレイしていたのをあまり顔を合わさないとしても家族の俺は、一応知っていた。 そして思った。 またこいつの負けず嫌いか、と。 カードゲームや、プラモの組み立て、スケボー、トランプのイカサマ。 俺の得意とする数少ない…いや、数というか、質の低いというか。 そんな俺の特技を、使えない特技を、昴は次々と真似ていった。 そんなあいつによく言ったもんだ。 お前にはお前の良いところがある、と。 それは、言葉の通りだった。あいつは俺より勉強出来るし、女子にもモテた。 家にも女子を連れて来たことがあった。 なのに、どうしてかあいつの目の敵は、いつだっていつまでだって俺だった。 「…スバル?って、カケルの弟?」 隣のハルの心配そうな声に慌てて我に返る。 「あ、あぁ…俺の弟で、サヤの双子の兄だよ。やっぱあいつ、こっちに居るのか。」 「…そんなだろうと思った。」 「は?」 「ショウ兄、お兄ちゃんのこと知らないと思った!」 実直で的確な言葉と離れない視線に、言葉が詰まる。 「…し、仕方無いだろ…俺あいつに嫌われてるし。」 「なんでそうなんのよ!」 前へ |次へ |
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