《MUMEI》 未だ離れない視線と腹から出た様なでかい声に、店内は静まり、俺はたじろいだ。 ハルを見た訳では無いが、気配は止まっている。 「お兄ちゃんはいつも上をいくショウ兄と仲良くなりたくてこのゲームをやってるんだよ。」 息を荒げ、尚も言葉を続ける。 「言ってたもん。ゲーム、強くなれたら一緒に出来るかなって。それなのに、ショウ兄いつも一人で…!」 声を荒げて瞳に涙が滲み、ついには滴として頬を伝った。 「ご、ごめんって!ちゃんと…する、から…!」 何とどうするのか解らないが、取り敢えず泣かれると自動で焦る性格なので、謝ってみる。 我ながら`取り敢えず謝る´という選択に感心すらしている。 が、期待していた反応は返って来なかった。 「謝るなら…お兄ちゃんに謝れバカ!」 あまりに合点のいく怒鳴り声に、俺は呆然とせざるを得なかった。 そんな俺の隣で話を丸々聞いていたハルが、何処からか可愛らしいハンカチを取りだし、サヤの手元に近付けた。 寂しさや不安が押し寄せたのだろうか、サヤは更に泣き出し、ハルはそれを宥める形となった。 行き場の無い俺の手と、周囲の痛い俺への目線。 そんな時に集合するのがあいつらだってのは、俺が痛い程知っている。 前へ |次へ |
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